30数年前のとある会話

—<当時の思い出 ここから>—

かつて、NECの電子デバイス事業部の?、ショールームとして、Bit-INNと言う名前のショールームが日本に点在していた時代がございました。

私は高校1年の夏に、父親にNECのマイコントレーニングKIT「TK-80」を買ってもらったのですが、買いに行ったのは大阪日本橋、「TK-80」本体をICMで購入し、ハンダ付けセットと、TK-80用電源を共立電子で購入し、自宅で組立を行い、しばらく使っていたのですが、タンタルコンデンサ逆接続が原因で、故障しまして、大阪のBit-INNで修理してもらった事がありました。

そして、その数年後社会人になった頃に、滋賀県にNECマイコンショップ システムイン滋賀が出来たと言う事で、当時、頻繁におじゃまして、PC-8001を弄らせて頂いていた頃の話です。

私:こんにちわー。今日も使わせて貰っていいですかー?。
システムイン滋賀スタッフさん:どうぞ、今日はまだ誰も来られていませんから、開いてる席のどこでも、お好きな席を、お使いください。
私:ありがとうございます。
システムイン滋賀スタッフさん:コーヒー此処においておきますね。それから何かわからないことがございましたら、いつでもスタッフにご質問くださいね。
私:いつもすみません。無料でパソコン使わせて頂いて、その上コーヒーまでごちそうになってしまって。

そして、その日も、私以外の、お客さんが来店し始める。

来客2号さん:おもむろに自分のプログラムを収録したカセットを、セットしてプログラムロードし、なにか動かし始める。

私:「いつもの来客2号さんだ、常連さんだなー。あ!、また今日もあのプログラム動かしている。」と思いながら、しばし観察。

来客2号さんは、なにか、見つけたのか、プログラムを強制終了して、デバッグをはじめる。そして、またプログラムを動かし始める。

私:あのー。来客2号さん、そのプログラムは何ですか?

来客2号さん:ああ、これですか?。ライフゲームという理論がありまして、それをBASICで組んでいるところです。

私:へー、ゲームですか?。それって面白いゲームですか?でも、見た所インベーダーゲームや、テニスゲームみたいに、キーボード操作ほとんどしてないですよね。

来客2号さん:ゲーム?、いえいえ、これは、ゲームと言うか、ある特定の条件下での生存にかんする、シミュレーションの一つなんですよ。いわゆる一般的な遊びのゲームじゃ無いんです。

私:へー、そうなんですか?。ゲームじゃない。シミュレーションなんですかぁー。

私:点いたり消えたりしていますけど、何をシミュレーションしているんですか?

来客2号さん:今はまだ、これは、理論をプログラム化している段階ですから、こんな感じですけど、いずれは、応用として、大規模な集団における、いろいろな事について、未来を予測する手段にしたいと思っているのです。

来客2号さん:大風呂敷を承知で言えば、人類の未来を予測して悪いことを避け、良い事に向けるために事前に未来を予測するシステムとして、この理論が使えるか、それをやりたいと思っているのです。

私:へーーー。何か、すごいですねー。

来客2号さん:貴方も、ここの常連さんと、見受けますが、何時も何をなさっているのですか?

私:今月号の、月刊ASCIIに掲載されたゲームの入力をしています。此処で入力して、此処で遊ばせてもらおうと思って。でも、何処かタイプミスしたらしくて、動かないんですよねー。

—<当時の思い出 ここまで>—

当時のマシンスペックはものすごい低スペックでしたが、来客2号さんが、そのPCにかけた夢は壮大だったんだなーと、思います。

将来、人類が被る災難を事前に、コンピュータシミュレーションで察知し、そして、その災厄の回避方法や災厄後の回復について、綿密かつ入念なシミュレーションを行うことで、人類の安全を確保してゆこうという取り組み。の第一歩を、30年前にすでに歩んでいた方が居られたんだなーという事を思い出しました。

i-padのCM

コンピュータを戦争に使うべきじゃ無いと思うけど、方便としてはやるかも。

とか、

未来予測をするシミュレーションシステムが高精度化するとは、どういうことかを考えれば、そのシミュレーションされる社会なり宇宙なりが、現実のほぼコピーになることでもあり、そこに自分の人格のコピーが生活し、リアルな感覚で感じ取り、リアルな感覚で傷つき苦悩し、苦難を乗り越えていく。現実世界のコピーが無数に作られ、少しずつ異なるパラメータで最適解を探し求めて、無限とも言える回数、シミュレーションが実行される。

とか、

現実とシミュレーションとの間で、自分の人格のコピーが苦悩し苦悶する。

とか思うときに、シミュレーションの中の自分の人格のコピーにとっては、その世界は現実であって虚構ではなくなる。

さて、J.P.ホーガン著作の「内なる宇宙」では、コンピュータ内部で生成された人格が、現実世界のリアルな人物に対して憑依してくるというテーマだったように思います。

<蛇足>

PC-8001は、NECの電子デバイス事業部がやっていたらしいですね、PC-9801はオフコンなどをやっていた事業部の製品らしくて、これまでのTK-80やPC-8001の頃の電子デバイス事業部の製品ではなかったらしいです。

インテルのCPUの8080とそのファミリーのセカンドソースライセンスでNEC電子デバイス事業部が製造販売していたVLSIを販売するためにTK-80を作り、やがてTK-80がTK-80BSとなり、TK-80COMPO BSとなり、PC-8001、PC-8801、そして、その次のPC-100までが電子デバイス事業部で、PC-9801からは情報処理事業部が手がけたらしいのですが、確認不足です。この辺りの事を書いておられるサイトがありましたので興味が、お有りのかたは、ご覧いただければと思います。

PC-8001のマシンスペックと言いますと、8ビットCPUで4MHz動作(DMAにより2.6MHz相当での動作らしい)、メインメモリーはROM32KバイトにRAM32Kバイト、後にFDDが出てくるまでは、カセットデータレコーダーが外部記憶装置。最初の頃の外付けFDDは、128Kバイト片面単密のドライブが2機搭。と言う事で、現在のマシンのスペックと比べると、64ビットマシンは8ビットマシンの8倍,動作速度4GHzは4MHzの千倍、メインメモリは4Gバイトは64Kバイトの6万2千500倍(計算ミスでした)6千250倍、ストレージは当時のカセットテープかもしくはFDDに比べて、ギガバイトやテラバイトと言う状況です。

つまり、私達の技術では、今の所、完全な人格のコピーを生成出来ないので、まだ安心していていいのでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です